LGBTについて面接官が全く知らないときの対処法
「LGBTなんて聞いたことない!」という人は最近になって非常に少なくなってきた。テレビや雑誌で当事者の悩みが知られるようになっただけでなく、カミングアウトして活躍する有名人が増えてきたことも、この理由の一つだろう。
しかし、今もLGBTを誤解している人がいる。
私自身、大学でジェンダー・セクシュアリティ研究をしていた。就職活動中には必ずと言っていいほど専攻内容を聞かれたが、LGBTの話題は年配の人事担当者に通じないケースが多く、説明に苦労した記憶がある。
同性のパートナーがいるゲイの友人は、「同性パートナーが福利厚生の対象になるか聞きたいんだけど、前他の企業でゲイについてめっちゃ誤解されてたからもう説明めんどくさいんだよね……」と悔しそうだった。
そこで今回は、就職・転職活動中の「LGBTについて話す必要があるけれど全然伝わらない」ケースに備え、どういった誤解が多く、どう説明するのが良いかを紹介する。
もちろん、就職・転職活動以外の日常会話でも活かすことができる。また、企業で人事を担当している方も知っておくべき内容となっているので、ぜひご覧いただきたい。
- よくある発言①「そもそもLGBTってなに?」
- よくある発言②「ゲイ(レズビアン)ってことは、心は女(男)なんだよね?」
- よくある発言③「LGBTについて勉強してるってことは、自分もそうなの?」
- よくある発言④「LGBT、流行ってるもんね」
- おわりに
よくある発言①「そもそもLGBTってなに?」
こう尋ねられるだけならまだいいが、「ああ、LGBT、同性愛者だよね」と誤解した発言をする人も多く、その時スムーズに説明できることが望ましい。
「LGBT」とは、Lesbian(レズビアン)Gay(ゲイ)Bisexual(バイセクシュアル)Transgender(トランスジェンダー)の頭文字をとっており、現在ではセクシュアルマイノリティの総称として用いられている。
レズビアンは自身が女性だという認識のもと女性を愛し、ゲイは自身が男性だという認識のもと男性を愛する。そのため、これら二つは「同性愛者」だと言える。
では、他のセクシュアリティはどうだろう。バイセクシュアルは男性と女性を愛するセクシュアリティで、「同性のみを愛する」わけではない。また、トランスジェンダーは社会から割り当てられた性と性自認が異なるセクシュアリティであるため、愛する対象がどうであるかは関係ない。
くわえて、「LGBT」の中にはこれら以外のセクシュアリティも存在する。
例えば「アセクシュアル」は恋愛感情や性的感情を抱かないセクシュアリティだし、「リスロマンティック」は好きになった相手に好意を向けられると相手を好きではなくなるセクシュアリティだ。
このようなことを「LGBT=同性愛者」と誤解している人に伝える必要があるのだが、面接の場などでは時間も限られていたり、緊張していたり、なかなかうまく言葉を紡ぐことができず、結果として「えっと、LGBTっていうのは、他にもいろいろあって……」と具体例を挙げているうちに「何が言いたかったんだっけ?」となりがちだ。
わかりやすく伝えるためには、簡潔に、かつ核となる「同性愛者だけではない」を伝えるためにも、
「LGBTとは性の「あたりまえ」に違和感を抱く人たちで、同性愛者だけではありません。性的感情を抱かないといった人もいれば、周囲の性に対する認識と自分の性に関する認識がずれていて苦しむ人もいます」
とまとめると良いだろう。
よくある発言②「ゲイ(レズビアン)ってことは、心は女(男)なんだよね?」
ゲイとは「自分のことを男性だと認識しており、男性を好きになるセクシュアリティ」、レズビアンとは「自分のことを女性だと認識しており、女性を好きになるセクシュアリティ」だ。
「ゲイ=心は女」「レズビアン=心は男」
と言っている人は、
「ゲイ=男を好きになる」「男性を好きになる=女性」
「レズビアン=女性を好きになる」「女性を好きになる=男性」
の構図が頭にできている。異性愛が当然だと思っているからこそ生まれる誤解と言えよう。
「いえ、ゲイ(レズビアン)とは自分を男性(女性)として認識しつつ男性を好きになる人を指します。男性(女性)が好きだからといって、自分のことを女性(男性)だと認識しているとは限りません」と端的に説明すれば、当事者の性自認についても誤解なく伝わる。
よくある発言③「LGBTについて勉強してるってことは、自分もそうなの?」
筆者である私自身、面接官に尋ねられた。本人に悪気はないのかもしれないが、ここにも問題点が潜んでいる。
「あなたもそうなの?」と尋ねられると、尋ねられた側としては、「え、カミングアウトしなきゃだめ?」「隠しておいても選考には関係ない……のかな?」と思ってしまう。
カミングアウトとは、自分のセクシュアリティ(をはじめ、誰にも打ち明けていなかったこと)を「自分の意思で」相手に伝えることを指す。では、カミングアウト「しなければいけない」のか考えてしまう状況で、果たして本人の意思が最優先となっているだろうか。
「言いたくなかったら黙っていればいいじゃん」と思うかもしれないが、日常会話で「ゲイでしょ?」「バイセクシュアルじゃないの?」と言われて居心地悪く感じる人がいることを忘れてはならない。
カミングアウトしたくない人にとっては、カミングアウトを求めてくるような言動自体が苦痛になってしまう。
私はクエスチョニングで、性自認が不安定だ。Xジェンダーなのか、男性なのか常に悩んでいる状態なのだが、これを説明すること自体が手間であり、信頼する人にしかカミングアウトはしていない。そのため、面接官の発言にはすごくモヤモヤしてしまった。
また、それ以前の問題として、LGBTについて勉強をしている人が全員LGBTとは限らない。
そこで、「法学部ってことは、法律家になるの?」「教育学部ってことは、先生になるの?」に対して「そういう人もいるけれど、当然そうじゃない人もいます」と返答することが多いように、「LGBTについて勉強してるってことは、自分もそうなの?」に対しても「そういう人もいますし、そうではない人もいますね」と濁すと良い。
それでもなおセクシュアリティについてしつこく聞いてくるような企業に関しては、入社後もセクハラやSOGIハラの恐れがある。自分らしくはたらくことができそうにないな、と思った場合は無理に答えることなく「すみません、そこについて詳細に説明すると非常に複雑になってしまうため、控えさせてください」と答えられない旨を正直に伝えるのも一つの方法だ。
もちろん、カミングアウトしたい場合は「はい」と答えた後に自身の経験を述べる方が楽だろうが、その場合にも勉強しているのは当事者だけではないと説明して誤解を解いておきたい。
よくある発言④「LGBT、流行ってるもんね」
これも私が面接の際に言われた言葉だ。
冒頭でふれたように、カミングアウトする芸能人や、LGBTをテーマとする作品は昔に比べ増えてきたように思える。
その一方、「LGBTが流行っている」と言われて違和感を覚える人がいるだろう。
人は流行に応じて自分のセクシュアリティを変えるわけではない。「今まで女性だけが好きだったけど、男性も女性も好きになりたいからバイセクシュアルになろう!」となれるわけではない(もちろん、「昔はゲイだったけど、今はバイセクシュアルだ」のように、時間が経つ中で自然と性に関する要素が変化するケースは存在する)。
また、そもそも流行のように一過性のものではなく、LGBTに対する偏見や差別に立ち向かってきた当事者は、私たちが生まれる前からいる。
「昔から差別や偏見に苦しむ当事者はいましたし、“流行っている”はあまり適していないかと……でも、たしかに最近テレビとかではよく見るようになりましたよね!」
と答えるのが、相手に嫌な思いをさせることなく誤解を解きつつ、場の雰囲気も良くなるベターな回答だ。
おわりに
私や友人の経験に基づき、面接官の様々な発言と、それに対するベターな返答を紹介してきた。
しかし、こうした誤解がない企業に入ることが一番だし、面接官の方にしてみれば、自身の誤解による発言で優秀な人材が離れてしまうことは避けたいところ。
LGBTに関する正しい知識をつけたい方はぜひ、JobRainbowのサービスをご利用ください。