【タイ・アメリカ・日本】世界の多様な性のあり方 11選【LGBTだけじゃない】

ライター: JobRainbow編集部
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今まで社会はヘテロセクシュアルかつシスジェンダーの男女のみにフォーカスしてきましたが、近年はLGBTの存在が顕在化し、関連する話題がとても増えていることにお気づきの方も多いと思います。

「LGBT」という言葉が普及して、今までマイノリティだった人々の認知度が上がることはとても良いことですが、実は世界中にはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーというカテゴリーに当てはまらない人々もいます。

今回の記事では世界の多様な性のあり方、「LGBT」のカテゴリーに当てはまらない、性のあり方をご紹介します。

「LGBT」に当てはまらないとは?

現代の西洋やその文化に影響された地域では性的少数者はゲイトランスジェンダーアセクシュアルインターセックスなどと言った用語でカテゴリーされています。しかし、世界中にはこのカテゴリーに当てはまらない性のあり方が溢れていることにも、近年注目が集まりつつあります。LGBTという言葉ができる前から存在する性のあり方、土着の文化や信仰と融合したアイデンティティなど、LGBTに当てはまらない性も多様です。

その中で、西洋等の価値観によって迫害された人々や、LGBTという用語が浸透する中で忘れられつつある文化があることも事実です。最近ではこの文化的な理由で西洋のカテゴリーに当てはまらない性のあり方を第3の性と括ることも多くなっています。

日本の例

近年では日本も西洋と同じようなカテゴライズをすることが多くなっていますが、それ以前から存在していた性のあり方やそれに影響された文化は今日でも見られます。

1. オカマ

みなさん、「オカマ」という言葉は聞いたことあると思います。とても悲しいことですが、軽蔑的、差別的に使用されることが多く、使うのは避けたい言葉です。しかしその由来には、日本独自の性文化の歴史があります。

オカマ(御釜)はもともとお尻をさす江戸時代の俗語でした。転じて、男性同士の性行為の際に受け身となる人々をさす言葉になり、受け身が女性的だということで女性的なゲイの人々やトランスジェンダー女性をさす言葉となりました。なので本来は性自認や恋愛対象ではなく同性間での特定の役割をさす言葉でした。

伝統的に男性同士の性関係である男色が一般的であった日本では同性愛自体を揶揄する言葉ではなく受け身であることを揶揄する言葉ができたのかもしれませんね。英語圏のゲイコミュニティでも近年になり、性行為の際に受け身なゲイ男性を揶揄するボトム・シェイミング(bottom shaming)が問題になっています。

2. 若衆

男色が一般的だった時代、男性同士の関係は年齢によって役割が決められていました。元服前の若い青年は「若衆」と呼ばれ、先輩男性の「念者」との性行為では受け身の役をしていました。年功序列のこの文化は師弟関係を経て、立派な男性に育つという儀式的な意味があったそうです。

男色はセクシュアリティというより男性が通る「道」だったので、多くは女性と結婚することになります。性自認、恋愛対象、年齢とそれによって決まる役割である若衆という複雑なジェンダーは日本の第3の性の代表として近年海外メディアに取り上げられています。

海外の例

1. タイ: ガトゥーイ(Kathoey)

日本のメディアでもタイのジェンダーの多様性はとても頻繁にトピックになっていますが、タイにはなんと18ものジェンダーカテゴリーが存在すると言われています。自分自身の割り当てられた性、ジェンダーパフォーマンス(男らしい振る舞い、女らしい振る舞いなど)、性自認をベースにしながら、恋愛対象の性やジェンダーパフォーマンスなどと組み合わさり18のジェンダーが日常的に使われていると言われています。

その中でもよく知られているのはガトゥーイ(Kathoey)で、日本のメディアで「タイのオカマ」と呼ばれている人々の多くは、本来はガトゥーイというジェンダーです。主に男性として生まれ、男性を恋愛対象とし、程度の違いはあれど日常的に女性的な自己表現をしている人々がガトゥーイです。性転換手術を受けている人から立ち振る舞いが女性的である人までガトゥーイに含まれます。

2. 南アジア: ヒジュラ (Hijra)

地域によって呼称や定義に差がありますが、インドをはじめとする南アジアで第3の性とされている人々です。主に男性として生まれの性を与えられ、女性的な服装や髪型を取り入れる人や仕事をする人を指しますが、両性具有や去勢手術を受けた人々なども含みます。

恋愛対象は必ずしもヒジュラであるかどうかを定義するわけではありませんが、恋愛対象が男性であることが多いと言われています。西洋のメディアではインド版のトランスジェンダー、宦官やトランスベスタイト(異性装者)と紹介されることが多かったヒジュラですが、最近では第3の性と言うカテゴリーが定着しています。

地域がイギリスによって植民地支配された際には、キリスト教や西洋の教えに反するとして犯罪化され、イギリス政府はヒジュラの根絶を目指しました。インドは独立後にイギリスによって作られた法律を撤廃しましたが、差別は未だに残っています。現代では西洋化が進み性転換手術をしたり、第3の性ではなくトランスジェンダーと自認することも増えています。

3. アラビア半島: ハニース(Khanith)

オマーンをはじめとするアラビア半島で女性的な特徴をもち同性を恋愛対象とする男性です。ゲイのコンセプトと違うのは、同性間の関係で受け身(女性的)な役であるかどうかが定義に含まれることです。

主にイスラム教の影響の強い地域に住むハニースの人々はプレッシャーにより、女性と結婚し家庭を持つことも少なくないと言われています。

4. サモア諸島: ファファフィネ(Fa’afafine)

Fa’aは ”〜のように”、Fafineは ”女性” というサモア語に由来する言葉で、男性として生まれ女性の社会的、文化的な特徴を持っている人たちを指します。恋愛対象は男性が多いですが、女性と結婚し子をもうけているケースもあります。

性転換やホルモンを投与される方も最近ではいますが、身体的な変化はファファフィネになるために必要とはされていません。現代、日本や西洋でトランスジェンダーの方々は社会的な性別の特徴に近づける(シスジェンダーと人々との差を埋める)ことを重視されることが多いようですが、ファファフィネのコミュニティでは重視されていないと言えます。

5. ハワイ、タヒチなど: マーフー (Māhū)

ポリネシアのハワイ語とタヒチ語で “間” を意味する言葉で、ハワイのゲイやトランスジェンダーなどメディアでは紹介されてきましたが、ハワイやタヒチの文化では中性的もしくは両性的な特徴を持つ人を含む広い意味を持つ言葉です。有名な画家ゴーギャンがタヒチを1891年に訪れた際、彼の派手な洋服を見て現地の人々は彼がマーフーだと信じたそうです。

現代ではハワイのフラの先生でマーフーのクム・ヒナさんが世界的に知られています。クム・ヒナこと、ヒナレイモアナ ウォン-カル先生は男性として生まれ、女性の代名詞(She/Her)を使い、ボーイフレンドを持ち、心は ”間” であることをドキュメンタリームービーで言及しました。また、女の子として生まれながら男性のフラのパートを踊る生徒も、同様にマーフーとされます。性的指向などは特に関係なく、このようにジェンダーが ”間” であることがマーフーの主な定義となります。

ネイティブ・ハワイアンでマーフーのクム・ヒナと西洋化され男女が二元化したハワイを見ることができる2014年公開のドキュメンタリー映画 「アロハの心をうたい継ぐ者/Kumu Hina」

6. メキシコ: ムシェ(Muxe)

メキシコ南部、オアハカ州のサポテク族に伝わる風習で、男性として生まれながらも女性性をもつ人々です。スペインによる圧迫的な植民政策以前から存在しており、そもそも土着の言語であるサポテク語にはスペイン語や英語にあるHe/Sheのように性を区別する機能がありませんでした。

母系社会のサポテク族で女性の仕事を担う男性がいたことが由来だと言われていて、女性として生まれ男性性をもつ人をマリマチャ(Marimacha)と呼ぶそうです。また、地域では毎年11月にムシェの人々を祝うパレード「Vela de Las Intrepidas」が開催されます。

7. 北アメリカ: トゥー・スピリット(Two-Spirit)

大陸の北から南の広範囲で部族ごとに多様な文化を形成したネイティブ・アメリカンの人々ですが、共通して男女どちらのカテゴリーにも属さない人々がいました。現代になり、これらの人々を総称する用語として英語のトゥー・スピリットという用語が生まれました。このネイティブアメリカンの歴史を配慮し、カナダではLGBTQ2 (Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer, Two-Spirit) という用語が公的に使われることも多いです。

異性装をしたり、部族内で異性の役割を担ったりする人々を主に差しますが、部族の文化によっては性別による社会の役割のない場合もあり、定義も定まっていません。1990年代にアメリカの学会で注目されはじめ、西洋のカテゴリーに当てはまらない性のあり方について研究が始まったきっかけとも言えます。

8. バルカン半島: ブルネシャ(Burrnesha)

ヨーロッパのバルカン半島の国アルバニアとコソボ、モンテネグロの一部の文化で、ブルネシャは男性の社会的に役割を担う女性だと言われています。英語圏ではブルネシャは ”Sworn Virgins”、すなわち “ 誓った処女”と 呼ばれ、一生処女を貫くことを誓う儀式を経てブルネシャなることに由来しています。

男性の仕事を担い、男らしい名前を持ち、銃を持ち、他の男性と会話を自由にしていいなど男性の地位を与えられます。ジェンダーやセクシュアリティーをカメラを通じて探求されている写真家のジル・ピーターズ(Jill Peters)さんが撮影したブルネシャの人々の姿がこちらで見られます。

9. ナポリ: フェミニエロ (Femminiello)

イタリアのナポリ地方では男性として性別を割り当てられながら、女性として生活する人々をフェミニエロと呼んでいたそうです。幼い頃から女性の洋服などを着て育てられていますが、あくまで女性的な男性として人生を送っていたと言われています。

18世紀頃の絵画や彫刻に頻繁に登場し、ナポリの人々にとっていかに日常的だったかが伝わってきます。ナポリの貧しい地域の家庭に多くいたと言われ、その地域では幸福をもたらす特別な存在として敬われたそうです。

おわりに

様々な性のあり方をサポートしようとする社会の動きのおかげでLGBTの認知度が高まっている中、「LGBT」というのも1つのカテゴリーにしか過ぎないんだということを理解していただけたと思います。

現代西洋の思想がスタンダードとなっている今だからこそ、世界の性のあり方は多様なんだということを忘れないで毎日を過ごしていきたいですね。

「第3の性」って?男性でも女性でもない、世界のジェンダー事情【徹底解説!】

セクシュアルマイノリティ、セクマイとは?定義や種類まとめ【「LGBT」とは違う?】

参考文献

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BEING A BOTTOM DOES NOT MEAN BEING BOTTOM OF THE PILE, Nov 22 2017.

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Kumu Hina

Ola Synowiec, The third gender of Southern Mexico, 26 November 2018.

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“Last of the burrnesha: Balkan women who pledged celibacy to live as men”, The Guardian, Emilienne Malfatto and Jelena Prtoric, 05 August 2014.

“14 Stunning Portraits Of Albania’s Few Remaining Sworn Virgins”, Refinery 29, Kaelyn Forde, 23 March 2016.

Jeff Matthews, The Femminiello in Neapolitan Culture, Nov 2009

Portland Art Museum,Lecture: Gender Bending in Eighteenth-Century Naples.

Nico Lang, This 18th-Century Italian Painting Proves Gender Nonconformity Is Far From a Modern Invention, 11 Jul 2016.

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