セクシュアル・フルイディティとは?【性に関することはすべて変化する?!】

ライター: JobRainbow編集部
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実は性自認性的指向には、「周囲の状況や経験によって変わることがある」という性質があることをご存知ですか?

子供の頃からの経験や周囲の状況に応じて興味や関心が変わってきたように、セクシュアリティにも同じ性質があるのです。

しかしながらこの性質が誤解されて、セクシュアルマイノリティへの間違った政策が取られていることも事実です。

今回は性自認や性的指向の流動性を表す「セクシュアル・フルイディティ」と、Xジェンダーバイセクシュアルパンセクシュアルとの違い、そして性の流動性を正しく捉えるための知識をお伝えします。

セクシュアル・フルイディティとは?

水

セクシュアル・フルイディティ(sexual fluidity)は、直訳すれば「性の流動性」すなわち、「(周りの状況によって自発的に)性自認も性的指向も変わることがある」という性の性質を表す言葉で、主に日本よりは欧米で浸透しています。この流動性の度合いは人によって異なり、全く変化しないという人もいれば、日常生活に影響が出るほど変化するという人までさまざまです。

日本では「性に関わる事柄(性自認・性的指向)が流動的だ」と自認している人を指すことが多いですが、正しくは

  • 性自認が流動的:「ジェンダー・フルイド(gender-fluid)」
  • 性的指向が流動的:「セクシュアル・フルイド(sexually fluid)」

と呼びます。

みなさんの中にも、昔と今とで恋愛対象が変わったり、自分の性についての捉え方が変わったりしたという人がいるのではないでしょうか。こうした変化が起きたことで「あれ?おかしいぞ?」と感じることや、周囲の視線を恐れるといったことがあるかもしれません。

しかし実は、こういった変化は当たり前のことであり、隠す必要は全くないのです。

つまり、例えば自分や周囲の人の性的指向が突然変わることや、性自認がわからなくなることはごく普通に起こるといえます。

子供が成長するにつれて趣味や関心が変わるように、セクシュアリティも

  • メディアからの知識
  • 自分がしてきた様々な経験
  • 幼少期から家庭にある価値観

といった様々な要素の影響で、人間の成長とともに変わるものです。

そして、成長や変化のどの過程・段階も、「個人」を構成する上で欠かせない要素なのです。

ちなみに、周りの状況ではなく「相手の性表現によって性的指向が変わる」という人は、erotic plasticityということもあるそうです。(正式な日本語訳はありませんが、直訳すると「性的柔軟性」になります)

Xジェンダーとジェンダーフルイドの違い

海とキャラクター

日本で生まれた「Xジェンダー」という性自認には

  • 自分が男性と女性の中間地点にいると感じる「中性」
  • 自分が男性でも女性でもあると感じる「両性」
  • 自分が男性でも女性でもない(とある一点に)いると感じる「無性」
  • 自分が複数の性の間を行き来していると感じる「不定性」

の4つのタイプがあります。Xジェンダーもジェンダー・フルイドも、「男性/女性と断言できない」という意味では似ていますし、Xジェンダー不定性とジェンダー・フルイドはほとんど同じアイデンティティです。

しかし、Xジェンダーは「自分の性自認が揺れている」「自分の性が定まらない」といった性を自認している人を指す日本語であり、海外には浸透していません。一方ジェンダーフルイド英語であり、これがXジェンダーとジェンダーフルイドの最も大きな違いです。

バイセクシュアル、パンセクシュアルとセクシュアル・フルイドの違い

男性と女性の足

「セクシュアル・フルイドの人は性的指向が変わるのなら、バイセクシュアルパンセクシュアルと同じなのでは?」と思った方もいるかもしれません。

しかしながら、これら3つの性的指向は全く異なるんです。

  • バイセクシュアル=男性・女性の両方を好きになる
  • パンセクシュアルは男性・女性以外も(相手の性にかかわらず)好きになる

つまりバイセクシュアルは常に男性と女性、パンセクシュアルは常に全ての性を対象とします。

それに対してセクシュアル・フルイドの人は、例えば「昨日は女性が好きだったけれど今日は男性が好き。先週は男性・女性どちらも好きだった。」というように、日によって好きになる対象が異なります。

みなさんや周囲の人の中には、バイセクシュアルとパンセクシュアルの間で性的指向が流動しているという人や、周りの状況によってはアセクシュアルになるという人もいると思います。

こうした性的指向の揺れ動きや変化がある人を、セクシュアル・フルイドと呼びます。

性の流動性に関する「誤解」

性自認や性的指向は周囲の環境や経験などによって変化していくという性質があり、その性質のことをセクシュアル・フルイディティと呼びますが、この性質が誤解されたために社会には様々な問題が残っています。

同性愛者やトランスジェンダーをはじめとする、セクシュアルマイノリティへの「治療」がその代表例です。英語では「コンバージョン・セラピー(conversion therapy)」といい、多くは宗教的理由で行われます。

これは決して過去の出来事ではありません。現在もニューヨーク州などを含むアメリカの41の州で合法とされています。全米のうち約70万人がすでにこの治療を受けており、6万人弱の若者が近いうちに治療を受けることが決定しています。若者の中には「親が治療を決めた」という人もいます。(参考:INDEPENDENT, “More than 20,000 LGBT teenagers in US risk subjection to ‘gay conversion therapy’”

その内容は電気ショックを与えたり、世間一般的な「普通」とは異なる言動をとった際に嫌悪感を与えたり暴力を加えたりすることで、自分たちがセクシュアルマイノリティであることへの嫌悪感を植え付けるというものでした。

セクシュアルマイノリティを禁止する宗教を信仰している家庭や社会で同性愛者が生活することはとても難しく、自分や家族が「変えたい」と思うことはあるかもしれません。しかしながら、個人のセクシュアリティはあくまで環境の変化に応じて、個人個人が納得できる範囲で変わっていくのであり、「変えなさい」といわれたからといって変わるものではないのです。

また、すでに何人もの研究者がコンバージョン・セラピーの無効さや自殺率上昇などの危険性を訴えているように、セクシュアルマイノリティである人間を「治療」するという現在の方法は、性の流動性を誤解したためにうまれた間違った手段です。

「セクシュアリティは第三者の手で変えられるものではない」ということをきちんと理解するということが、すべての人が「自分らしく」生きることの第一歩でしょう。

おわりに

 いかがでしたか。

「性自認とか性的指向って変わることがあるものなんだ!」という発見や驚きがあった方や、コンバージョン・セラピーを初めて知った方も多いのではないでしょうか。

この発見や知識を踏まえて、自分や周囲の人のセクシュアリティについてより自由に捉え、これまでやこれからの経験を大切にしていただけたらと思います。

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